しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
秋雪の逆鱗に触れた尾鷹家は、四季杜との取引を全面的に停止されるという未曾有の危機に直面した。
しかし、綾子の取りなしがあったおかげか、今後一切、四季杜家に関わらないことを条件に、多少のお目溢しはあった。
紬は社交界でその悪行が知れ渡ると、良識のある人々から相当なひんしゅくを買った。
今後、彼女と好んで関わろうと思う人はほとんどいないだろう。
梅見の会を無事終えた衣都は予定通りコスモスハーモニー音楽教室に復帰を果たした。
「本日より復帰しました。今後ともよろしくお願いします」
結局、例の騒動に対する抗議よりも、復帰を熱望する生徒や保護者の数の方が多かったらしい。
自分のしてきたことが評価されて嬉しかった。
響の許しをもらったので、しばらくはこのままピアノ講師の仕事を続けていくことになった。
二人の結婚式は予定通り、その年の秋に行われた。
厳かな教会で豪奢なウェディングドレスに身を包んだ衣都は、緊張と興奮で胸を躍らせていた。
花嫁の母が担うベールダウンは綾子にお願いし、バージンロードを律と二人で歩いていく。
目の前には、愛する人が待っている。
「永遠の愛を誓いますか?」
「はい、誓います」
「誓います」
神父の前で愛を宣誓し指輪を交換したら、いよいよ誓いのキスだ。
長すぎる誓いのキスは、律をとことん呆れさせた。
しきたりによって結ばれた二人だが、相思相愛なのは誰の目から見ても間違いなかった。