財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる

「は、あ……」
「もっと欲しい」
 
 欲望が閃く瞳で見つめられて、ゾクリと鳥肌がたつ。
 これから響が食べるのは自分なのだと蕩けた頭が期待で膨れた。
 ワンピースと下着が脱がされ、一糸まとわぬ姿でベッドに組み敷かれると、いよいよ冷静でいられなくなる。
 身体をなぞる指先が衣都を惑わせ、悦ばせる。
 甘く掠れた声が鼓膜を震わせるたびに、頭の芯が痺れていく。
 はしたないと思われたくないのに、甘い声がとまらない。

「あ、んんっ……!」
「いいよ、衣都。もっと乱れて……。衣都の可愛い声が聞きたい」

 唇を噛み締める衣都を安心させるように、響が言い聞かせた。
 まるで自分自身が楽器になったみたいだ。
 響の愛撫に合わせて啼く淫らな楽器に。
 響は衣都の望み通り、恋人のような甘いひと時を与えてくれた。
 今日だけと決めていたのに、狂おしいほどの切なさが胸を占める。
 このまま何も考えずに溺れてしまいたかった。

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