財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる
2.四季杜家のしきたり
響とひとつになった翌朝、衣都は肌を滑るシーツの冷たい感触で目を覚ました。
「おはよう、衣都」
「おはよう……ございます」
破瓜の痛みを労わるようにベッドからゆっくり身体を起こしていく。
発表会の翌日、日曜日となる今日、教室は休みだ。慣れない行為をしたばかりの衣都にとっては、ありがたかった。
昨夜脱がされた服はどこかと視線を巡らすと、サイドチェストの上に畳まれた状態で置かれていた。
言わずもがな、響の仕業だ。
響本人は既に身支度を整え終わっており、ソファに座り何食わぬ顔で新聞を読んでいた。
ジャケットからボトムスまでキチンと身につけられていると、昨夜、裸で抱き合ったことが夢のよう。
「起きてすぐで悪いけれど、この後両親と会う予定があるんだ。急いで支度してもらえる?」
「……はい」
衣都は頷くと怠い身体に鞭を打ち、シャワーを浴びるためにバスルームへと向かった。
昨夜の残り香をすべて洗い流すと、ようやく実感が湧いてくる。
――夢のような一夜はもう終わってしまった。
そう遠くないうちに響はあの女性と婚約し、最後には結婚してしまうのだ。
ズキンと胸に痛みが走る。