財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる
「私、こんな状況になってしまった今でも……あの夜、響さんに身を任せたことを後悔してないんです」
それは衣都の嘘偽らざる本心だった。
現状に戸惑う気持ちはあっても、あの夜をなかったことにしたいとは思わない。
あの日に戻ることができたとしても、きっと同じ選択をしたに違いない。
「響さんの『初めて』が、私でよかった――」
衣都は常識も遠慮もかなぐり捨てて、響の胸に飛び込んだ。
もう逃げない。
自分の気持ちからも、響の気持ちからも、目を逸らしたりしない。
ただの憧れなら、傷つかないでいられた。
衣都に足りなかったのは夢を現実にするための覚悟と勇気だ。
(響さんが『愛してる』と言ってくれるなら……私は……)
もっと強くなる。
誰に非難されても、この恋を死ぬまで貫き通してみせる。
「私、響さんと結婚します」
「絶対に幸せにするよ――」
二人は額を寄せ合い微笑み合うと、一足早い誓いのキスを交わした。