財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる
(なんだかすごく幸せな気持ち……)
風呂上がりのようにポカポカと身体が温かい。
幸せすぎて、すっかり頭がのぼせている。
(まさか、あんな風に想ってくれていたなんて……)
嬉しいに決まっている。
結婚するとか、しないとか、という話はさておき、ずっと片想いだと思っていたんだから。
クルーズ船が客船ターミナルに戻り、下船してからというもの、衣都の心はずっとこの調子でふわふわしていた。
それは、響も同じようで、フロントガラス越しに目が合うと照れくさそうに微笑み返してくれる。
今まで見たことのない響の照れ顔に、胸の奥がくすぐったくなる。
「衣都」
車がマンションに到着すると、響は助手席のドアを開け、衣都の手を取りエスコートしてくれた。
付き合いたての恋人のように手を繋ぎ、部屋まで歩いて行く。
しかし衣都はそれだけでは満足できず、大胆にも響の腕にぎゅうっとしがみついた。まるでコアラみたいだ。
(ずっとくっついていたい……)
どうしようもないほどに浮かれているとは、自覚している。
世の恋人達は皆この気持ちを隠して街を歩いているのだと思うと、尊敬の気持ちしか湧かない。