財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる
紬の話を聞いて、正直ショックだった。
響が何人もの女性と遊び歩いていたことはもとより、"初めて"だと嘘をつかれていたことに、ひどく打ちのめされていた。
(愛していると言ってくれたのも嘘なの……?)
性急な結婚話の真相を本人に直接尋ねる勇気はなかった。
ひょっとしたら、一緒に暮らしている今でも、他の女性と関係を持っているのではないか?
(そんなの嫌っ……!)
響の身体の熱さを誰かが知っていると思うと、絶望しか感じられない。
名前もわからない女性達に対する嫉妬の炎で焼き尽くされそうだ。
ひとつ疑い出したら、あれもこれも嘘だったのではないかと簡単に揺らいでしまう自分が嫌だった。
(何も考えたくない……)
現実を受け入れることを拒絶するように、ぎゅっと目を瞑り、手で耳を塞ぐ。
そうしているうちに、衣都はいつの間にか寝入ってしまったのだった。