可憐なオオカミくん
2
「あれ……?」
視線の先には白い天井。鼻にはツンと残る消毒液の匂い。
視線を落とすと、どうやらわたしはベッドに寝ているようだった。
ベッドってことは、ここは保健室?
今日は入学式で。初登校初日で。男の子に話しかけられて。葵ちゃんが守ってくれて。
アイドル顔負けの可愛さの葵ちゃん。
そうだ。葵ちゃん。
嘘だ。あんなに可愛い葵ちゃんが男の子なんて。
だって、葵ちゃんには男性恐怖症の拒否反応出なかった。
そうだ。きっとなにかの悪い夢だ。
「あー。起きた! よかったー。ぶっ倒れるから、心配したよ」
「あ、葵ちゃん?!」
ベッドのすぐ隣のパイプ椅子に座った葵ちゃんが、柔らかい微笑みを浮かべてわたしの顔を覗き込む。
きゅるんと潤んだ瞳。アイドル顔負けのかわいい顔。さらさらの髪も綺麗。
やっぱり夢だったんだよね。こんな可愛い男の子がいるはずない。
「残念だけど……葵くんです!」
そうはっきり言いきった言葉が心に刺さった。
嘘だと言って。
また、ふらりと身体が揺れる。