可憐なオオカミくん


「一華、大丈夫? 僕が守るから!」

「えっと」

「僕が、一華のことを、男から守るから!」

「でも、葵ちゃん。いや、葵くんだって、男の子でしょ?」

「大丈夫。僕には拒否反応出ないでしょ?」

「あれ? ほんとうだ」

 葵くんは、今、半径50センチ以内にいる。

 男の子が半径50センチ以内にいると、わたしの男性恐怖症のレーダーが発動して、蕁麻疹やら身体に症状が出るはずだ。

 なのに、冷や汗も蕁麻疹も出ていない。


「平気でしょ? 僕なら」

「……」

「だって、こんなに可愛いんだから♡」

 そう言って、にこっと微笑んだ顔があまりにも可愛くて、無意識に深く頷いていた。
 思わず肯定せざる負えない笑顔だ。


「確かにかわいいです……」

「ね? だから、大丈夫♡ 僕が一華の男恐怖症を治してあげる」

 葵くんはいつのまにか、わたしの手を握っていた。

「(全く頼んでないんですけど――!)」
 
 

 葵くんは、わたしの男恐怖症を治してくれるらしい。

 
 頼んでもいないし、全く望んでもいない。
 頼んでやめてもらえるならば、喜んでやめてくださいと申し出る。

 でも、あまりにも可愛い顔で言うものだから、拒否することが出来なかった。

 にっこり笑った瞳はきらりと光って見えた。
 その綺麗な瞳に吸い込まれて、拒否することを忘れてしまったんだ。

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