可憐なオオカミくん
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 林間学校のねらい。

 ・野外での活動を通して、自然に親しむ心を育てる。
 ・集団行動を通して、社会性、協調性を学ぶ。
 ・友達と協力しながら活動し、生徒同士の中を深める。





 入学式後の最初の行事は林間学校。
 一泊二日。隣町の自然豊かな環境の中で行われる。

 ドキドキ。わたしは楽しみがあると朝早く起きちゃうタイプ。

 今日は、5時に自然起床。二度寝なんて出来るはずもなく、寝不足のまま林間学校を迎えた。



「一華! 楽しみだね。林間学校」

「うん。穂乃果ちゃん。同じ班になってくれてありがとうね」

「うん! 一華の騎士(ナイト)は任せて! 私が男子から守ってあげる」

 意気込んで言ってくれた穂乃果ちゃん。

 仲良くなった彼女には、男性恐怖症のことを説明していた。どんな反応が返ってくるか、おそるおそる話したものの、返ってきたのは優しい反応だった。「なんで早く言ってくれなかったのー。もっと協力できたのにー」そう言って、なんだか悔しそうにするので、すごく心が温かくなった。



 林間学校は男女混合で、4~5人で班構成。
 避けたくても、男子を避けれない環境だったので、穂乃果ちゃんの存在はとても頼りになる。心の安定剤だった。


「一華、なにかあったら僕に言ってよ?」

「う、うん。ありがとう。葵くん」

 そう。葵くんも一緒の班だ。
 今日も今日とて、葵くんはかわいい。

 少し大きめの運動着。肩まであるサラサラの髪をちょこんと後ろで縛っている。
 髪を結んでも、かわいいな。


 なんか、今日の葵くん。
 かわいいけど、かわいいよりも――。
 かっこいい。結んでいるからうなじが見えて、色気を感じる。
 

 って、なに考えているんだろう。わたしは。
 頭を左右にぶんぶんと、大きく振って邪な気持ちを搔き消した。

 
 でも、今日はなんでカッコいいと思っちゃうんだろう。じーっと見つめていると、パチッと視線が重なった。


「一華。今日は髪の毛ポニーテールなんだ? かわいい」

「う、うん。たくさん動くと思って。葵くんも……かっ、」

 次に喉まで出かかった言葉は「かっこいい」だった。最近、葵くんは可愛いはずなのに、かっこいいと思ってしまうんだ。


「かっ、か、かわいい。ですね、」

「なんで敬語―? あははっ」

 口から出た言葉は「かわいい」の方だった。
 心の中では、カッコいいと思っているのに。なぜか言葉にするのは難しい。


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