可憐なオオカミくん
「葵ー。最近、髪伸ばしてんの? 早くうちにきて髪切りなよ!」
「あー。いいや。しばらく伸ばすから」
穂乃果ちゃんと、葵くんは仲良さげに話している。
え、二人って仲良しさん?
思わず二人を見てぽかんと固まってしまう。
間抜けな顔をしていたと思う。わたしの顔を見ると、穂乃果ちゃんが説明をしてくれた。
「あー。一華に言ってなかったっけ? 葵とは、幼馴染なんだよ。そして、私のお母さん美容師だから、たまにうちでカットしてたんだよね?」
「そ、そうだったんだ」
心臓のあたりが、ちくっと痛い。
あれ。どうしたんだろう。
なぜ痛むのか分からなくて、戸惑うことしか出来なかった。
穂乃果ちゃんと、葵くんが仲良さげに話す姿が視界に入るたびに、ちくっと心臓辺りが痛かった。
二人は幼馴染なんだから、仲がいいのは当たり前なのに。
なんでモヤモヤするんだろう。
はっ。わかった。
わたし、ヤキモチ妬いているんだ。
……穂乃果ちゃんが取られたようで、ヤキモチ妬いているんだ。
この学校で唯一の女友達だもん。そうだよね。
原因がわかると、心が少しだけ軽くなった、気がする。