可憐なオオカミくん

 葵くんがわたしのリュックを背負ってくれたおかげで、錘のように重かった足も進むようになった。

 その後は何事もなく、みんなでゴールすることができた。完全に葵くんのおかげだ。


「葵くん。リュックありがとう。重かったよね?」

「全然っ。平気!」

 平気とは言ってくれたけど、肩は上下に揺れていた。

 そうだよね。普通に歩くだけでも辛いのに、二人分の荷物を持って歩くなんて、息もあがるよね。

 申し訳なさから自然と顔が俯く。


「あっつー。ダメだ。暑い」

 バサッと音がしたと思い、顔を上げると、どうやら葵くんは運動着を脱いだようだ。
 白いTシャツから、見えた露出された腕は筋張って見えた。そして、色白な首筋に汗が伝っていた。

 どくん。まただ。心臓が高鳴り始めた。
 
 なんでだろう。
 葵くんを見ただけで、ドキドキ心拍数が上がっていく。

 顔は女の子よりかわいい。
 だけど、体つきはやっぱり男の子だ。

 顔とマッチしない、男らしい体つきに、葵くんを直視できない。


「一華? どうした? 体調悪い?」

「え、いや。葵くんが男の子だから……」

「あ、ごめん! 拒否反応出た? まって。今すぐ50センチ離れるから!」

「拒否反応じゃなくて……なんか、ドキドキしちゃうの……」

「……」

 葵くんから返答がない。不安で俯いていた顔を上げた。すると、わたしよりも、さらに顔を真っ赤に染めた葵くんがいた。



「葵くん、?」

「僕も、ドキドキしてる。今」

「いっしょ、だね?」

 顔を真っ赤にさせて照れたように笑う葵くんから目を離せなかった。
 逃げたしたいほど恥ずかしいのに。
 吸い込まれたように、動けない。


「一華、あのさ……」

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