可憐なオオカミくん
「いた――! 一華。葵。探したんですけどー」
何か言おうとした葵くんの声は、大きな声に遮られた。声の持ち主は、離れた場所から叫ぶ穂乃果ちゃんだ。わたしたちの方に向かって、走ってくる。
「もう! 点呼の時間だよー」
「あ、うん。いくよ」
穂乃果ちゃんがきてくれて、正直ほっとしていた。
だって、これ以上ドキドキしたら、心臓が破裂しちゃうから。
その証拠に、まだ胸がドキドキとうるさい。
顔に熱が集中して、俯く顔を上げれなかった。