可憐なオオカミくん


 あたたかい春風が気持ちよい朝。
 今日は入学式。

 新しい制服に身を包む。
 紺色のブレザーにチェック柄のリボン。可愛い制服に気分も上がる。
 
 葵ちゃんと、友達になれたおかげで気分はうきうきしていた。

 昨日までのどんよりとした気持ちが嘘みたいだ。

 今まで出会ったことがないほど可愛くて、葵ちゃんは気さくで明るい。美少女なのに、鼻にかけていないところも素敵だった。

 そんな素敵な彼女と、友達になれたことがほんとうに嬉しい。


 学校に向かう足取りも自然と軽くなる。
 年度末に引っ越してきたため、転校生という扱いではなく、同じ新一年生としての対応だ。
 

 知り合いのいない空間に一人で乗り込むには勇気がたくさん必要。

 ドクドク。全身に緊張感が駆け巡り、心臓が嫌な音を立てて鳴りだす。

 大丈夫。大丈夫。
 そう、何度も心の中で唱えた。

 ガラっ。
 教室のドアをがらりと開けた。


 笑い声や雑談の声が飛び交っている音が、シンと静まり返った。思いがけずドアを開ける力が強すぎた。

 乱暴な開け方になってしまったせいで、クラスメイトの視線が突き刺さる。

 わ。注目されちゃっている。
 どうしよう。全然大丈夫じゃないよー。
 
 口を一文字にぎゅっと縛り、心の中で叫んだ。

 集まった視線は分散されていく。ほっと胸をなでおろしながら、黒板に張られた席順を確認する。

 うわ。寄りにもよって真ん中の席だ。
 どうしよう。周りの席が男の子だったら。
 心臓がドクドクと嫌な音をたてて鳴りだした。

 
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