クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
帰り際、『はい、これ。いつでも待ってます』と渡されたものは住吉さんの連絡先だった。受け取ったはいいものの、連絡できるはずもなく、住吉さんの連絡先はスマホカバーのポケットに直していた。
住吉さんの連絡先があるということは私にとっての唯一のお守りのような感じだった。住吉さんが近くにいるようで勇気をいただいているような気にさえなっていた。
住吉さんが退院して一ヶ月が経った。病院は相変わらずバタバタしているが私は一つの決断をした。
到底あと半年で500万もの借金を返すのは不可能。いくら時給がいいところで働いたとしても、月100万以上支払ってくれるところなんてない。
どう頑張っても返せないなら今後の私がどうなるか分からないならせめて迷惑だけはかけたくなかった。
看護師長に事情を話した私は、三ヶ月後に仕事をやめることになった。
一ヶ月は丸々有給が使えるため、実質、働けるのはあと二ヶ月。体力的にも精神的にもこれでよかったんだと思う。後は実家の和食屋の手伝いをしながら過ごすのみだ。それが今私にできる精一杯の行動だ。