クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
◆第二章
◆
「今までお世話になりました」
今日付けで退職となる私は、まとめていた荷物を持って職場を後にした。
今住んでいるアパートも退去し実家へと戻った。これから三ヵ月の間、実家を手伝いながら過ごしていく。こうして私の今世は終わっていくのだろう。
「穂香、これポストに出しに行ってくれる?」
「うん、分かった」
母から白い封筒を受け取り近くのポストへ投函すると、「羽賀さん」と、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「はい?」
後ろを振り向くと、私服姿の住吉さんが立っていた。数カ月ぶりに見た住吉さんは入院していた時とは違ってとても顔色が良かった。どうやら元気に過ごせているようだ。
「こんなところで何してんの?」
「看護師をやめて今は実家の手伝いをしています」
「へぇ、どこで働いてんの?」
「和食屋ですが……」
「今の時間帯空いてる? 俺、今から食べに行って良いかな?」
『昼ごはん食べてないんだよー』と、お腹を擦る住吉さん。
「住吉さんみたいな大社長に食べさせるご飯なんてないですよ」
私の言葉が冗談に聞こえたのか、住吉さんは『ハハッ』と笑みを溢した。