クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。


「だって、借金が……」

「理由はそれだけ? その借金、俺が返済する。そしたら付き合ってくれる?」


 もはや囁いてなんていないこの状況は、公開告白だ。父と母は目を丸くして私たちを見ていた。そして、言わずとも父と母から伝わってくる、「付き合いなさいよ」の圧。私はあえてそれに気づかないフリをした。なんでもするとは言ったけれど、借金を返してほしさに住吉さんの気持ちを利用したくない。


「付き合うにしても、そんな大金受け取るわけにはいきません。長くかかってしまうかもしれませんが、毎月ちゃんとお支払いしてお返しします」

 住吉さんは私の言葉に頭を悩ませていた。そして、

「俺は羽賀さんに助けてもらわなかったら今ここにいなかったと思うんだよね。意識が戻っていないときに俺の中で起きた現象なんだけど、暗闇に引きずり込まれる感覚があってさ。暗いのに、凄い心地よくて。ああ、俺もうこのままこっちに行ってしまおうかなって思ってたんだよね。そしたら必死で語りかけてくる声が頭の中に響いてきてさ、羽賀さん、手も握ってくれてたでしょ?」

 意識がないはずの時のことを一つ一つ丁寧に話だした。

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