クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。

 免許書で確認すると、男性の名前は住吉(すみよし)澄人(すみと)さん。


 その間スマホにはロックが掛かっていなかった為にお借りし、ご家族との連絡もスムーズに取ることができた。病院に着いてしばらくすると黒服を着た男性五名が病院に入ってきて、受付でうろたえているのを目にした。


「先ほどここに澄人様が運ばれたとの連絡が救急からあったのですが……」


 よほど不安なのだろう。他の黒服も落ち着かない様子で受付前をウロウロしている。他の患者様の怯えた目もあり、「住吉澄人さんなら、今治療中です。意識も戻られたので心配はないかと思います」と伝えると、「ありがとうございます」と黒服五名同時に深々と頭を下げられ感謝された。


 その光景は先ほどより目立っていて、「とりあえずこちらで待ちましょう」と治療室付近のイスに促す。


 この方達は『澄人様』と言っていた。きっと偉い方なのだろう。


 もしかしたら私がいることで気を使わせてしまうかもしれない。意識も戻っていたし、大事には至らないはずだ。これ以上ここにいる理由もないなと、早々と「後は看護師の指示をお聞きください。私はこれにて失礼します」と頭を下げ、病院を後にした。

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