クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
「親が決めた許嫁がいたにはいたけど俺が破棄したから。もちろん、親からは凄く怒られたし、許嫁はもちろん、相手方の両親も凄く怒って。面倒だから示談金で手を打ってもらった」
「示談金……」
「えげつない額だった。最初はこの別荘を受け渡して丸く収めてもらう予定だったんだけど気に入らなかったようで計画パー。俺の会社、大手財閥で有名な会社なのに俺ん家だけは金なくなるし。まあ、この別荘を良い値で買い取ってもらえるから多少裕福にはなるんだけどね」
澄人さんも大変なときに私はなんという迷惑をかけてしまっていたのだろう。
「すみません、そうとは知らずに私……」
「言っとくけど穂香の家は別。だから、俺が今後どんなに仕事を頑張って更に会社を大きくしようとしても、金をもらえるわけじゃないんだよね。だから、俺目当てで色目使ってくるヤツは正直無理」
私は澄人さんのことを知った気になっていただけで、全然何も知らなかった。
婚約破棄をして慎重なはずの澄人さん。私に告白をしてくれたなんて、あの出来事が夢だったんじゃないかと思う。一人モンモンと考え込んでいると「だから、大丈夫。親は結婚に関してはそんなに俺に期待してないから。まあ、見合い相手はしょっちゅう紹介してくるけどね」と嬉しそうに、だけど呆れながら返された。
「婚約破棄をして会社を継ぐときに、俺の将来は好きにさせてほしいって親に言ってるから」
「そう……なんですか?」
「うん。だからこの歳まで結婚してないわけだし」
「お見合い……は、全部断ってるんですか?」
「しつこくて何度か会ったりしてたけど、でも、穂香と出会ってから全部断ってる」
さっきまでのモヤモヤが澄人さんの言葉一つで消えていく。