クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
「待ってください! やっぱり私、出ます!」
否をも答えさせない勢いでお風呂の戸を開ける澄人さん。
タオルを腰に巻いた状態でワインとグラスを二つ手に持ち入ってきた。一緒に入るのはいくらなんでも大丈夫なわけない。お湯につけないようにと、隅に置いていたタオルを手に取りいつでも出れる準備をした。
警戒心マックスな私を見た澄人さんは「フッ」と笑みを溢した。
「俺、酒呑みながら温泉入るの一回やってみたかったんだよね。付き合ってくれる?」
遠慮がちな瞳で私を見る澄人さん。そんな目で見られると「いいえ」とは言えない。
「わ、わかりました……でも、あの、離れて入ってもらってもいいですか?」
隅に寄りながら質問すると、かけ湯をした澄人さんは「はいはいー」と言いながらお湯の中に足を入れた。
「腰のタオル取るけど……まだ、見る? 俺は別に見てくれててもいいよ」
腰に巻いていたタオルに手を掛けた澄人さん。すぐ意味を理解し、恥ずかしくて顔を下に向けた。