クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
『離れて』と言ったはずなのに、私のすぐ隣に肩を並べられ、隅にいる私は身動きが取れないでいた。
それに、そのまま視線を向けてしまうとお湯越しに色々見えてしまいそうで目線をずらすこともできない。非常識だと分かってはいるけれど、咄嗟に握りしめていたタオルを体に当てた。
「穂香はワイン飲んだことある?」
話題を振られ、ふと顔を上げ、目線は澄人さんの手元の゙ワインに移った。
「い、いえ……」
「このワインね、初めての人でも飲みやすくて美味しいよ。どうぞ」
トプトプと音をたてながら継いでくれたグラスをそっと受け取る。
「飲んでみて」
「は、はい。いただきます!」
グラスに口をつけ、ワインを口に含む。苦いけど、飲み込んだあとの後味はアッサリしていた。
「本当だ……飲みやすい……かも」
グラスに口をつけた後、ワインが減ったらすぐに足される。なので、ついたくさん飲んでしまう。
「うっ…………ふ」
頭がフワフワして、とても心地が良い。ここが天国と言われても何の疑問も抱かない。
「穂香、顔真っ赤。大丈夫?」
「ん、はい。へへへ。私、今幸せです」