クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。


「幸せ?」

「はい。私、借金返せなかったら、これからどう生きていけばいいのか分からなかったので。もう、死のうと思ってました。そんな時に澄人さんが助けてくれて……迷惑しかかけていないのに、それでも一緒にいることが楽しくて……こんな幸せなことってないです」


 お酒の力は凄い。頭がポワッとして、今まで言えなかったことがスラスラと出てくる。


 澄人さんもお酒に口をつけ、「嬉しいな」と私の話を黙って聞いてくれた。


「だからこれだけでもう十分なんです。これ以上望んだら罰が当たります」


 この言葉に嘘偽りはない。だからもう惑わせないでほしかったのに、澄人さんは私の顔を覗き込むような形で顔を近づけてきた。


「穂香はずるいな、自分だけ幸せになって」

「……へ」

「俺は『もうこれで十分』なんて全然思ってないんだけど。可哀想だと思わない?」

「ご、ごめんなさい、でも何回も言ってますけど、私は澄人さんとつり合うような人間ではなくて……」

「あのさ、俺だってこんな家に産まれたくなかったよ。まあ、許婚の示談金うんぬんで一気に金はなくなったけどさ、俺はもっと、普通の家系に産まれて、普通に過ごしたかった。だからかな、俺さ、信用できるヤツ多くないんだ。片手に数え切れるくらい」


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