クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。


 点滴準備をし、他看護師と薬剤の確認をした後、検温へ行く。
 他患者さんを回った後最後に住吉さんのところへと足を運んだ。


「住吉さん、おはようございます。今日担当の羽賀といいます。よろしくお願いします」


 挨拶をすると、ベッドに予め備え付けされているデスクを使ってパソコンで作業をしていた最中だった。チラ見し、私を見た瞬間手を止めた。


「……お願いします。あの、アナタって俺を助けてくれた人ですよね?」


 住吉さんは私が手を貸したことを知っていた。


「助けたって言っても私何もしてませんので。救急車を呼ぶことくらいしかできなかったですし……それよりご気分は悪くないですか?」

「大丈夫です。あの、本当にありがとうございました」


 深々と頭を下げてお礼を口にする住吉さん。

 夜勤帯の看護師は住吉さんは頭を打っていると言っていた。あまり動かされては困る。「大丈夫です。お元気になられてよかったです。それでは、血圧も計っていきますね」検温中、住吉さんは私にずっと視線を送り続けているのがヒシヒシと伝わってきた。


 患者様をこういう目で見ることは良くないのだけれど、住吉さんはお若く、爽やかそうな方で、顔も整ってカッコイイために緊張で手が震えてしまいそうになる。


 ……やりずらい。

< 5 / 44 >

この作品をシェア

pagetop