クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
検温を図り終えたタイミングで、「あの、羽賀さん」と住吉さんは私に声を掛けた。
「はい、なんでしょうか?」
「ここ一週間……というか、退院までもう5日くらいしかないですけど、ずっと俺の面倒を見に来てくれるんですか?」
……住吉さん。何か期待に満ちた目をしている。
患者さんからしてみたら看護師が日に日に変わるのは不安も大きいだろう。住吉さんに関わらずこういうことを聞いてくるお客さんは結構いるために説明をする。
「どの看護師がどの患者様を担当するかは毎日割り振られるので、退院するまでずっと私ではないと思います。でも、どの看護師も話しかけやすいので、何かあったら都度、遠慮なくおっしゃってくださいね」
そう説明すると、住吉さんはまた何か言いたそうな顔をしていた。
「あの、羽賀さん……現在恋人は?」
いつもなら「プライベートなのでお答えできません」と受け流しているのに、真っすぐ向けられた目に吸い込まれるように、
「…………いいえ」
と答えていた。