BitterなフリしてほんとはSweet【完】
「俺が、針間さんを送ってくる。これじゃ電車には乗れないだろ。」
「でも課長、会議が」
「わかってる。それまでには戻るから。」
今は朝10時。会議は13時。
彼女を家まで送り届けて帰ってきても、十分時間がある距離だ。
こんな状態で1人で帰しても、心配すぎて会議どころではなくなるのは目に見えてる。
すぐに自分のカバンを持って、ジャケットを羽織り会社を出る準備をする。
「田中資料用意よろしく。佐藤は本部長に伝えといて。三浦さん、針間さん支えて車までついてきてもらえる?俺は荷物を持つから。」
俺じゃなくてもできることは最大限やっておいてもらおう。
彼女のデスクで、身の回りの荷物を持つ。ふわっと香ってくるラベンダーの香り。
「瀧課長っ、私大丈夫なのでっ」
真っ赤な顔をして、ぶるぶる震えているのに、何も大丈夫じゃない。
「無理だよ。針間さん無理しないで、掴まって。」