BitterなフリしてほんとはSweet【完】
「だからって…」
ほんと、私のことなんだと思ってんのか…
「お前から回って来た書類、誤字脱字だらけなんだけど?」
右手に持たれている資料は、私が朝仕上げて時藤に引き継いだもの。
…なんかすごい赤字で訂正されてる。
「え、嘘…ごめんっ」
「お前らしくないミスじゃん?いつも完璧なのに。どうしたよ?悩みか?」
どうしたんだろう…
私が聞きたいよ。
「べ、別にそんなんじゃないよ」
ヘリウムガス並みに軽い時藤にこんなこと言うわけには行くない。
次の日には社内に広まっちゃうよ…
「いいや、嘘だね!なんだ恋の悩みか!?どうだ今夜話聞くぞ!」
こうやって言われて話なんて聞いてもらったことない。いつも時藤がずっと話してんだから。
「いいよ、本当に!」
「なんだ本当に恋なのか!?」
目がキラキラしてる…乙女じゃん。
「ちょっと!声がでかいよ!」
…ほんとデリカシーないんだから。
それに本当に恋なんかじゃないし。
自分のデスクに戻ろうと歩いていると、瀧課長と少し目が合ったけど逸らされてしまった。
…瀧課長の顔、すごく真っ赤だった。
ああ、ドキドキって胸がうるさい…。