財閥御曹司に仕掛けられたのは、甘すぎる罠でした。
8 私にふさわしい場所
晶子さんは私に「こちらを」と、一枚の写真を手渡す。
「旦那様は桜堂家の動きに少々敏感ですから――どんなに着飾っていても、お相手が依恋様であると一目で見抜いたようで。私に立花家に戻り、依恋様を連れ戻してくるように、とお達しが」
「叔父様が……」
手渡された写真を見る。
堂々と立ち振る舞う悠賀様と、まるでどこかのお姫様のような私が写っていた。
「叔父様はお怒りですよね……?」
恐る恐る尋ねる。
けれど晶子さんは首を横に振った。
「それが、どうやらこのタイミングで新興IT企業の社長が、うちに縁談を持ち掛けたのですよ。向こうは立花家の後ろ盾が欲しいそうで――」
「もしかして、それに私を……?」
「ええ。旦那様は依恋様を、と」
「やっぱり……」
きっと叔父様は、私が悠賀様の特別であると勘違いして、何か悠賀様――ひいては桜堂家に、何かぎゃふんと言わせる筋書きを描いているに違いない。
けれど、元より私は立花家の人間。
政略結婚をして、ここを出る方が正しかったんだ。
結局、私は立花家から逃れられない。
ほろほろと涙が溢れた。
悠賀様と、一緒にいたかった。
「依恋様……」
晶子さんが私の手からそっと写真を抜き取る。
そのまま、私の背をゆっくりと撫でてくれた。
「旦那様は桜堂家の動きに少々敏感ですから――どんなに着飾っていても、お相手が依恋様であると一目で見抜いたようで。私に立花家に戻り、依恋様を連れ戻してくるように、とお達しが」
「叔父様が……」
手渡された写真を見る。
堂々と立ち振る舞う悠賀様と、まるでどこかのお姫様のような私が写っていた。
「叔父様はお怒りですよね……?」
恐る恐る尋ねる。
けれど晶子さんは首を横に振った。
「それが、どうやらこのタイミングで新興IT企業の社長が、うちに縁談を持ち掛けたのですよ。向こうは立花家の後ろ盾が欲しいそうで――」
「もしかして、それに私を……?」
「ええ。旦那様は依恋様を、と」
「やっぱり……」
きっと叔父様は、私が悠賀様の特別であると勘違いして、何か悠賀様――ひいては桜堂家に、何かぎゃふんと言わせる筋書きを描いているに違いない。
けれど、元より私は立花家の人間。
政略結婚をして、ここを出る方が正しかったんだ。
結局、私は立花家から逃れられない。
ほろほろと涙が溢れた。
悠賀様と、一緒にいたかった。
「依恋様……」
晶子さんが私の手からそっと写真を抜き取る。
そのまま、私の背をゆっくりと撫でてくれた。