働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
* * *
礼拝室の中に残されたのは、オレールとダミアン、神官たちと、逃げ遅れた参拝者だ。
オレールはようやく我に返り、ダミアンに軽蔑の眼差しを向ける。
「兄上は、いったいなにをしにここに帰ってこられたのですか?」
「俺は、お前が困っているだろうと、領主を変わってやろうと」
「そんなに領主の座が欲しいならくれてやりますよ! けれど、ブランシュを侮辱したことだけは許せない。あの猫が魔獣だったことは俺も驚きました。でも、それがなんなんです? これまで、彼女と魔獣が俺たちに害を及ぼしたことなど一度もありません。それどころか、ずっと領民を救おうとしてくれていました」
オレールはそう言うと、ダミアンの頬を狙って拳を振るった。
ひ弱なダミアンは床に転がり、痛みを訴えて大騒ぎする。しかし、彼に寄り添ったのはマリーズだけで、領民たちは白んだ目で見詰めるだけだ。
「りょ、領主はオレール様だ。そうだろ? みんな」
「ああ。俺たちの土地だ。俺たちにだって選ぶ権利はある」
「ダミアン様は出て行け。先にここを捨てたのはあんただ!」
領民が一体となっての大号令に、ダミアンはようやく自分がこの場に望まれていないことを悟った。
「お、お前ら」
「領主として宣言いたします。ダミアン・ダヤン、あなたは次期領主としての職務を放棄し、この領土を貧困に追いやった。その罪を鑑みて、領から追放いたします」
「貴様!」
「出て行ってください。二度と、この地をおふみにならないよう」
「……くそっ」
ダミアンが立ち上がり、マリーズも気まずそうに後をついていく。
しかし、他に誰も追う者はいなかった。
静まった小神殿で、領民たちは一様にオレールを見つめた。
「みんなが、俺の領主にと望んでくれたこと、感謝する。ただ俺は、ブランシュ・アルベール以外を妻に持つ気はない。彼女は本当に心優しい、聖女と呼ぶにふさわしい人だ。正直、あの猫が魔獣に変化したのは、俺も今日はじめて知った。だから彼女にはなにか秘密があるのかもしれない。それでも、俺は彼女を選ぶ。ブランシュを妻にと請うつもりだ。そんな男が領主になるのは嫌だというなら、はっきり言ってくれ。その時は、親戚筋からふさわしい人材を探し出し、皆が困らないよう引継ぎをするから」
礼拝室の中に残されたのは、オレールとダミアン、神官たちと、逃げ遅れた参拝者だ。
オレールはようやく我に返り、ダミアンに軽蔑の眼差しを向ける。
「兄上は、いったいなにをしにここに帰ってこられたのですか?」
「俺は、お前が困っているだろうと、領主を変わってやろうと」
「そんなに領主の座が欲しいならくれてやりますよ! けれど、ブランシュを侮辱したことだけは許せない。あの猫が魔獣だったことは俺も驚きました。でも、それがなんなんです? これまで、彼女と魔獣が俺たちに害を及ぼしたことなど一度もありません。それどころか、ずっと領民を救おうとしてくれていました」
オレールはそう言うと、ダミアンの頬を狙って拳を振るった。
ひ弱なダミアンは床に転がり、痛みを訴えて大騒ぎする。しかし、彼に寄り添ったのはマリーズだけで、領民たちは白んだ目で見詰めるだけだ。
「りょ、領主はオレール様だ。そうだろ? みんな」
「ああ。俺たちの土地だ。俺たちにだって選ぶ権利はある」
「ダミアン様は出て行け。先にここを捨てたのはあんただ!」
領民が一体となっての大号令に、ダミアンはようやく自分がこの場に望まれていないことを悟った。
「お、お前ら」
「領主として宣言いたします。ダミアン・ダヤン、あなたは次期領主としての職務を放棄し、この領土を貧困に追いやった。その罪を鑑みて、領から追放いたします」
「貴様!」
「出て行ってください。二度と、この地をおふみにならないよう」
「……くそっ」
ダミアンが立ち上がり、マリーズも気まずそうに後をついていく。
しかし、他に誰も追う者はいなかった。
静まった小神殿で、領民たちは一様にオレールを見つめた。
「みんなが、俺の領主にと望んでくれたこと、感謝する。ただ俺は、ブランシュ・アルベール以外を妻に持つ気はない。彼女は本当に心優しい、聖女と呼ぶにふさわしい人だ。正直、あの猫が魔獣に変化したのは、俺も今日はじめて知った。だから彼女にはなにか秘密があるのかもしれない。それでも、俺は彼女を選ぶ。ブランシュを妻にと請うつもりだ。そんな男が領主になるのは嫌だというなら、はっきり言ってくれ。その時は、親戚筋からふさわしい人材を探し出し、皆が困らないよう引継ぎをするから」