働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
 オレールがはっきりと言い切ったことで、領民たちも心が決まったようだ。

「わ、私はブランシュ様を信じています!」

 まず叫んだのが、マリーズと共に侍女をしていたベレニスだ。

「ブランシュ様は、小神殿の掃除を欠かしたことはありません。リシュアン様の水晶を、大切にされていました。楽をしたい、自分のために生きたいと言いながら、実際は人のためにばかり一生懸命な方です。あの方が連れておられるのがたとえ魔獣だとしても、人を襲ったりなど、一度もしなかったじゃありませんか」
「そ、そうだよな」
「あの魔獣、ブランシュ様を守っていたんじゃないか?」
「そう言えばそうだな。ブランシュ様を守るためにあの姿になったみたいだった」
「聖女様は、最後までリシュアン神のことばかり言っていたぜ。本当に心優しい方なんだと俺も思う」
「俺もだ」
「私も」

 ブランシュをたたえる声が、どんどん大きくなってくる。

「では、俺はブランシュを迎えに行ってくる。皆はここで待っていてほしい」
「オレール様、行ってらっしゃいませ」
「絶対に見つけてきてください。私たち、一度でも疑ったこと、ブランシュ様に謝らなくちゃ」
「ああ」

 とはいえ、魔獣はすごい跳躍力で出て行ってしまった。
 どこから探せばいいか、オレールには思いつかない。

「リシュアン神……。ブランシュはどこにいる? どうすれば見つけることができるだろう」

 水晶の間に入ったオレールは、水晶に手を当て一心に祈った。ブランシュの居場所を、その姿を見つけたいと。
 水晶が、神託を告げる時の光り方をしていた。しかし、オレールには残念ながら声を聞く能力がない。

「くそっ、せっかく教えてくれているのに」

 水晶の言葉を読み取ることはできない。けれど、水晶の光が一方向に偏っていることには気づいた。

「西を……探してみるか」

 正解というように、光が中央による。

「神官、この水晶を持って行ってもいいだろうか」
「しかし、水晶は領の宝です。台座から外すなど」

 神官たちは戸惑いを見せる。

「だが、リシュアン神ならブランシュを探せる」
「いいじゃないか、神官。ブランシュ様を探すためだ。オレール様なら、絶対に水晶を無くしたりしないだろう!」

 人々の熱意に押され、神官は高級な絹の袋に水晶を入れた。

「では、これをお持ちください。しかし、水晶はこの国を守るものと言われております。あまり長時間この神殿から離すのは、心配です。できるだけ早く、ブランシュ様を見つけてください」
「もちろんだ。レジス、馬を準備してくれ」
「はいっ」

 こうして、オレールはレジスと少数の供だけを連れ、屋敷を飛び出したのだ。

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