働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
 伝えるべきことは伝えた。その先の、信じるか信じないかの判断は、ブランシュに決められることではない。

「そうか。……そうだな」
「信じていただけるのですか?」
「君の言う通り、リシュアン様が国のための神託をしていたのは、疑いようもない真実だ」

 ブランシュは、ほっとした。オレールが事実を踏まえて判断してくれる人で、本当によかったと思う。

《よかったね。ブランシュ》

 突然、頭の中にリシュアンの声がする。

「え? どうして? 小神殿からじゃここまでは届かないはず」

 ブランシュがきょろきょろとあたりを見回すと、オレールが思い当たったように胸のポケットから小水晶を出した。

「これのことか? もしかして今も、リシュアン様の声が聞こえるのか?」
「ええ。どうして水晶を? 神殿に安置してあるはずなのに」
「この水晶に、ブランシュの行き先を示してもらったんだ。俺は神の声を聞くことはできないが、光り方である程度言わんとすることを理解はできる。ブランシュを探したいと言ったら、領民たちも了承してくれた」
「……そうなのですね」

 中央神殿なら、絶対に許されるはずのない行為だ。それを神官たちも領民も許してくれたことが、ブランシュがこの場所で存在を求められているなによりの証拠となる。

「私、帰ってもいいんですね」
「ああ。みんなも待っている。ルネのことだけはなにかしら説明つけないといけないと思うが……」
「正直にお話すればいいと思います。ルネは思念体なのだと。信じられなかったとしても、他に説明のしようもありませんもの」
「そうか。……そうだな」
「ルネがわざわざ魔獣の姿になったのは、それでも、私を信じてくれる人の中で暮してほしいと思ったみたいです」

 ルネは正解というようにぴくりと尻尾を動かした。

《ルネはブランシュが好きだからね》

 リシュアンが優しい声で賛同してくれた。
 ふふ、とほほ笑んで見せれば、リシュアンの声が聞こえないオレールはただただ不思議そうな顔をしている。

「リシュアン様を、早く台座にお戻ししないといけませんね」
「ああそうだな。レジスたちもそこに待たせている」

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