働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
ダミアンは、南街道でダヤン領の警備兵に捕まった。
すぐに連れ戻され、オレールの前に突き出される。
「兄上、今度ばかりは許すわけにいきません」
「なぜだ。ダヤン領は俺の実家だ。そこから少し支援金をいただいただけじゃないか」
「神官たちの収入に手を付けるのは泥棒です。しかもあなたは、神殿に火を放った。これはもう、ダヤン領だけの問題ではありません。国そのものの結界にも影響を及ぼす話です。兄上の処遇は王都の司法の判断に委ねます」
「は? なにを言っているんだ。地方で起きた犯罪の対応は領主が取るものだろう。それも知らないで、お前よく領主なんて……」
「辺境伯家が犯罪に絡んでいる場合に、その要件は適用されません」
ぴしゃりと言って、ダミアンはその日から地下の牢の中で時を待つこととなる。
マリーズは、当初ダミアンに迎合しようとしたが、最終的にダヤン領の利益を重視し、結界を守ったことにより、おとがめなしでの放免となった。
ブランシュ付きの側近からは外され、本人は屋敷の外で仕事を見つけると言っている。
火事騒ぎの翌日、ブランシュは屋敷の人間および街の人に、ルネが賢者ルネの思念体であり、見た目の姿は変化させられるということを伝えた。
「そんなことある……?」
疑心暗鬼な人間は大勢いた。ブランシュはそれでもいいと思っている。信じる信じないは個人の自由だ。ただ、ブランシュは、自分の暮らすこのダヤン領で、嘘をつきたくはないと思ったのだ。
もちろん、ルネに怯える人はいた。けれど、ブランシュをよく知る人は、彼女の言葉を信じてくれた。
「これから四ヵ月かけて、屋敷と小神殿の修復を行う。完成した暁には、ブランシュとの正式な結婚式を行うつもりだ」
オレールがはっきりとこう言ったことで、それ以上、ブランシュを責めようという動きはなくなった。