働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
 一週間後、王都から命令書が届く。

『ダミアン・ダヤンは、国の大事な結界への破壊未遂行為により、ドランシ牢獄に収監』

 その知らせに、ダミアンは肩を落とし、オレールに詰め寄った。

「ドランシ牢獄だと? 入ったら一生出られないとこじゃないか」
「あなたは俺の大切なブランシュを傷つけ、さらに大事な小神殿にまで被害をもたらした。同情の余地はそこにはありません。陛下の采配通り、ドランシ牢獄へ行っていただきます」

 ドランシ牢獄は、終身刑の者が入る牢獄の中でも貴人が収容される施設だ。これでも多大な温情をかけてもらったと言える。

「きちんと反省を認めてもらえれば、いつか恩赦があるかもしれません。その時は、あなたの能力を国のために役立ててください」

 オレールの必死の声は、ダミアンには届いていたのだろうか。
 彼はうつろな表情のまま、ただオレールを見ていた。

「なんでお前が……」

 ひとりごとのように、小さく漏らされた言葉を聞けば、彼が自分を顧みるのはまだ先のことかもしれない。
 幼い頃の栄光にすがり、いつまでも自分が特別だと信じている彼は、もしかしたらとても、可哀想な人間なのかもしれない。

 その夜、ブランシュは心配で彼の元を訪ねた。

「オレール様、入ってもいいですか?」
「ブランシュか、どうした?」
「……落ち込んでおられるかと思って」

 ブランシュは持ってきたお茶を入れた。彼の好きなティンと呼ばれる地方のお茶だ。

「ティン茶か。ありがとう」
「お好きでしょう?」

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