働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
一日の仕事を終え、部屋に戻る途中だったブランシュは、厨房の方から悲鳴が聞こえ、慌てて駆け付けた。
そこには、朝食の下ごしらえを担当している下働きの娘がいて、箒を構えた状態で、震えていた。
『ブランシュ様、ネズミ! ネズミが出ました! 私、苦手なんですー!!』
『大丈夫?』
『男の人を呼んでくるので、見張っていてください!』
『え、ちょっと』
口を挟む間もなく、下働きの娘はブランシュに箒を渡して走っていってしまった。
ひとり厨房に取り残されたブランシュは、あたりを見回す。幸い、ネズミの姿は見えない。カサカサと音がするだけだ。
(私だって、ネズミは苦手なのに!)
こんなとき、自分は運が悪いなと思ってしまう。たまたま今廊下を通ったがために、悲鳴を聞いてしまい、こんなことになっているのだ。
(ていうか、早く戻って来てー!)
箒を握る手に力を込めたとき、目の前を影が通り過ぎた。
「いやっ、来ないでー!」
恐怖のあまり目をつぶり、ブランシュは箒を振り回した。
しかし、そんなものにやられるほどネズミは鈍くさくはない。そして、目をつぶったまま上手に箒を扱えるほど、ブランシュはの運動神経はよくなかった。
振り回した箒は戸棚に激突し、箒に乗せた力はそのまま反対方向の力へと変わった。
「きゃあっ」
ブランシュはバランスを崩し、背中向きに倒れ、頭から床に激突してしまったのだった。
(そうよ、それで気を失って、なぜか前世の記憶がよみがえって……)
咲良のことを前世だと言い切れるのは自分でも不思議だったけれど、妙に確信があった。
そこには、朝食の下ごしらえを担当している下働きの娘がいて、箒を構えた状態で、震えていた。
『ブランシュ様、ネズミ! ネズミが出ました! 私、苦手なんですー!!』
『大丈夫?』
『男の人を呼んでくるので、見張っていてください!』
『え、ちょっと』
口を挟む間もなく、下働きの娘はブランシュに箒を渡して走っていってしまった。
ひとり厨房に取り残されたブランシュは、あたりを見回す。幸い、ネズミの姿は見えない。カサカサと音がするだけだ。
(私だって、ネズミは苦手なのに!)
こんなとき、自分は運が悪いなと思ってしまう。たまたま今廊下を通ったがために、悲鳴を聞いてしまい、こんなことになっているのだ。
(ていうか、早く戻って来てー!)
箒を握る手に力を込めたとき、目の前を影が通り過ぎた。
「いやっ、来ないでー!」
恐怖のあまり目をつぶり、ブランシュは箒を振り回した。
しかし、そんなものにやられるほどネズミは鈍くさくはない。そして、目をつぶったまま上手に箒を扱えるほど、ブランシュはの運動神経はよくなかった。
振り回した箒は戸棚に激突し、箒に乗せた力はそのまま反対方向の力へと変わった。
「きゃあっ」
ブランシュはバランスを崩し、背中向きに倒れ、頭から床に激突してしまったのだった。
(そうよ、それで気を失って、なぜか前世の記憶がよみがえって……)
咲良のことを前世だと言い切れるのは自分でも不思議だったけれど、妙に確信があった。