働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
* * *
聖女たちが揃って朝食を食べていると、ドロテが突然「あら?」と顔を上げた。
「どうしました? ドロテ様」
「聞こえませんか、皆さん」
ドロテはフォークを置いて、神妙な表情をした。五十代の彼女がそうすると、妙に威厳がある。
「私には、神の声が聞こえました。皆さん、水晶の間に移動しましょう」
ドロテの声に、他の六人の聖女が背筋を伸ばす。ブランシュだけは動揺していた。
(いつもあんなに話しかけてくれるのに、今、私にはなにも聞こえなかった。どうしたんだろう、リシュアン様、ドロテ様にだけ呼びかけたのかしら)
神の神託は絶対だ。聖女たちは朝食を中断し、いそいそと水晶の間に移動する。
基本的に、七聖女が揃って聞いた神の声を、総合的に判断したものが神託として広められる。これは、聖女の力によって、聞ける内容の範囲が異なるからだ。
水晶の間に入り、中央の水晶を囲むように、七聖女が定位置に着く。
ブランシュは妙に緊張してきた。
朝、話したときは、特に変わった様子はなかったはずだ。急に何事か起きたのだろうか。
「それでは、リシュアン神より神託をいただきます」
ドロテが音頭をとり、神へ捧げる聖句を読み上げる。七聖女が順にその後を読み上げていく。聖句をささげることによって魔力を送っているのだ。
それに応えるように、リシュアンの声が降ってくる。
《暮れの土地の領主と結婚せよ、ブランシュ》
ブランシュは目を見開く。一瞬思考が止まった。
「……え?」
(ちょ、ちょっと待って? いや、言ったけど。結婚したいって確かに言ったけど、でもそれって、いつかの話ですからねー!?)
皆が静まり返る中、おずおずと三番目の聖女が口を開く。
聖女たちが揃って朝食を食べていると、ドロテが突然「あら?」と顔を上げた。
「どうしました? ドロテ様」
「聞こえませんか、皆さん」
ドロテはフォークを置いて、神妙な表情をした。五十代の彼女がそうすると、妙に威厳がある。
「私には、神の声が聞こえました。皆さん、水晶の間に移動しましょう」
ドロテの声に、他の六人の聖女が背筋を伸ばす。ブランシュだけは動揺していた。
(いつもあんなに話しかけてくれるのに、今、私にはなにも聞こえなかった。どうしたんだろう、リシュアン様、ドロテ様にだけ呼びかけたのかしら)
神の神託は絶対だ。聖女たちは朝食を中断し、いそいそと水晶の間に移動する。
基本的に、七聖女が揃って聞いた神の声を、総合的に判断したものが神託として広められる。これは、聖女の力によって、聞ける内容の範囲が異なるからだ。
水晶の間に入り、中央の水晶を囲むように、七聖女が定位置に着く。
ブランシュは妙に緊張してきた。
朝、話したときは、特に変わった様子はなかったはずだ。急に何事か起きたのだろうか。
「それでは、リシュアン神より神託をいただきます」
ドロテが音頭をとり、神へ捧げる聖句を読み上げる。七聖女が順にその後を読み上げていく。聖句をささげることによって魔力を送っているのだ。
それに応えるように、リシュアンの声が降ってくる。
《暮れの土地の領主と結婚せよ、ブランシュ》
ブランシュは目を見開く。一瞬思考が止まった。
「……え?」
(ちょ、ちょっと待って? いや、言ったけど。結婚したいって確かに言ったけど、でもそれって、いつかの話ですからねー!?)
皆が静まり返る中、おずおずと三番目の聖女が口を開く。