働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
「聞こえました。『聖女……結婚……辺境』ですわね」
「わたくしも。『ブランシュ。結婚』と」
「私には『暮れの土地の辺境伯』と聞こえましたわ」
六人の聖女たちは口々にそう言い、視線をブランシュに向けた。
「ブランシュ、貴方にはどう聞こえた?」
「え、えっと。き、聞こえました。『暮れの土地の領主と結婚せよ』と」
ブランシュはドキドキしながら、答えた。若干声が震えるのは、仕方ないだろう。
「……どうやら、リシュアン神はブランシュに結婚するようにとおおせのようですわ」
「でも、聖女が結婚なんて前代未聞ですわ」
「それでも、神託です。無視するわけにはいかないのでは?」
「そうね。神の采配ですもの」
戸惑いがちに交わされるほかの聖女の声を、ブランシュは呆然としながら聞く。おそらくリシュアンは、朝のブランシュの話を聞いて、結婚相手を探してくれたのだろう。
きっと善意だ。だけど、顔も知らない相手と結婚だなんて困る。
(リシュアン様は魔獣だから、善意の方向が間違ってるの?)
焦りすぎてパニックになっているうちに、残る聖女たちは神託をまとめてしまった。
「では決定ですね。神託は、『聖女ブランシュ・アルベール、暮れの土地の辺境伯と結婚せよ』というものです。神殿はこれを、国王陛下へと進言いたします」
ドロテがうやうやしく告げた。
「よろしいですね。ブランシュ」
六聖女の視線が、ブランシュに注がれる。
「は、……はい」
ブランシュはうれしいのかどうかさえわからないまま、ただ頷いた。