働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
「まあ、暮れの土地の辺境伯はこんなにお若いの?」

 後ろから飛び出してきたのは、六番目の聖女のキトリーだ。

「いいわねぇ。ブランシュ。私が代わりにいっちゃ駄目なのかしら」
「キトリー様! 辺境伯に失礼ですよ。そもそも、このお話をご承諾なされるかどうかもわからないのですから」

 目の前でふたりの聖女が言い合う様を、オレールが不思議そうに見ている。

「あ、あの」
「失礼しました。ダヤン辺境伯。私、七番目の聖女のブランシュ・アルベールと申します。神託のことで神殿長様よりお話があります。どうぞ奥の部屋へ」
「神託? いや、私は領主の変更を伝えに来ただけで」
「いいからこちらへ」

 キトリーが腕を組むようにして、オレールを引っ張っていく。

(キトリー様だってまだ結婚適齢期だものね。本当は出たいのよね。ここから)

 年頃の娘であれば、当たり前だろう。誰だって、神殿で女としての時期を無為に過ごすくらいなら、外に出て人並みの幸せを手に入れたいと思うはずだ。

(……まあ私の今後も、この人の返答にかかっているのだけど)

 図らずも領主の交代に伴い、ブランシュの相手は彼だということになる。実際の年齢は知らないが、見た目から考えれば、釣り合いの取れない年齢ではないだろう。

(とりあえずは、リシュアン様に感謝ね。まともそうな人だし、……見た目は好みだわ)

 体つきはたくましく、騎士だと言われた方が納得できるくらいだ。なにより、赤褐色の瞳が、綺麗だと思った。
 果たしてこの神託がどう転がるのか、ブランシュはドキドキする心臓を押さえられなかった。
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