働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
いざ、ダヤン領へ
オレールが領地に戻るのに合わせて、ブランシュは神殿を出ることになった。
慌てて整えた旅支度は、かばんひとつという少なさだ。聖女は基本的に支給された服を着ているので、服などは、慌てて昨日既製品を購入してきたのである。
「これで、いいかしら」
かばんの口を閉めて息をつくと、ルネが膝に乗って来た。
「ルネ? どうしたの?」
《僕も行こうと思って》
「いいの? あなたは世界を見守るために中央神殿に居なきゃいけないんじゃないの?」
疑問をそのまま口にすると、ルネは首の代わりにしっぽを振った。
《水晶があるところなら管理はできるから、大丈夫。今は君の頭の中の方に興味があるからさ。連れて行ってよ》
「私の頭の中を覗けるのでしょう? それがすべてよ」
《君が思い出さなければ、見えないんだよ。まあ、反対したところで着いていくさ》
「オレール様に怒られなければいいけど」
なにを言っても聞きそうにないので、オレールが許可してくれることを祈るばかりだ。
「さあ、リシュアン様ともお別れをしてきましょう」
水晶の間に、他に人はいなかった。ブランシュは柔らかい布で、いつもするように水晶の表面を磨き上げる。
「リシュアン様、ありがとう。私、第二の人生を歩みます」
《ブランシュ、……またね》
水晶が虹色に光る。きっと祝福のつもりなのだろう。本当に優しい神様だと思う。
「ブランシュ、ここにいたのか。お迎えが来ているぞ」
「あ、はい。今行きます」
神殿長の声に、ブランシュは駆け出す。神殿の入り口には、オレールたちの一行が待ち構えていた。
「オレール様、これからよろしくお願いいたします」
「あなた用に馬車を用意した。これに乗ってくるといい」
「はい。あと、この猫を連れて行ってもいいでしょうか」
ルネを見せると、オレールは少し困ったような顔をした。
「猫か」
「面倒は私がしっかり見ます。ご迷惑にはならないようにしますから」
「……あなたの慰めになるのならばいいでしょう」
オレールは動物が苦手なのか、少し引き気味だったが、受け入れてくれるつもりはあるようだ。
「よろしくお願いします」
こうして、ブランシュは神殿から旅立った。聖女の資格を持つ者が、中央神殿を出たという前例はなく、ブランシュが初めての嫁入りする聖女となる。
これから自分がどういう名で呼ばれるのかわからないけれど、胸の内にあるのはわくわくした気持ちだった。
慌てて整えた旅支度は、かばんひとつという少なさだ。聖女は基本的に支給された服を着ているので、服などは、慌てて昨日既製品を購入してきたのである。
「これで、いいかしら」
かばんの口を閉めて息をつくと、ルネが膝に乗って来た。
「ルネ? どうしたの?」
《僕も行こうと思って》
「いいの? あなたは世界を見守るために中央神殿に居なきゃいけないんじゃないの?」
疑問をそのまま口にすると、ルネは首の代わりにしっぽを振った。
《水晶があるところなら管理はできるから、大丈夫。今は君の頭の中の方に興味があるからさ。連れて行ってよ》
「私の頭の中を覗けるのでしょう? それがすべてよ」
《君が思い出さなければ、見えないんだよ。まあ、反対したところで着いていくさ》
「オレール様に怒られなければいいけど」
なにを言っても聞きそうにないので、オレールが許可してくれることを祈るばかりだ。
「さあ、リシュアン様ともお別れをしてきましょう」
水晶の間に、他に人はいなかった。ブランシュは柔らかい布で、いつもするように水晶の表面を磨き上げる。
「リシュアン様、ありがとう。私、第二の人生を歩みます」
《ブランシュ、……またね》
水晶が虹色に光る。きっと祝福のつもりなのだろう。本当に優しい神様だと思う。
「ブランシュ、ここにいたのか。お迎えが来ているぞ」
「あ、はい。今行きます」
神殿長の声に、ブランシュは駆け出す。神殿の入り口には、オレールたちの一行が待ち構えていた。
「オレール様、これからよろしくお願いいたします」
「あなた用に馬車を用意した。これに乗ってくるといい」
「はい。あと、この猫を連れて行ってもいいでしょうか」
ルネを見せると、オレールは少し困ったような顔をした。
「猫か」
「面倒は私がしっかり見ます。ご迷惑にはならないようにしますから」
「……あなたの慰めになるのならばいいでしょう」
オレールは動物が苦手なのか、少し引き気味だったが、受け入れてくれるつもりはあるようだ。
「よろしくお願いします」
こうして、ブランシュは神殿から旅立った。聖女の資格を持つ者が、中央神殿を出たという前例はなく、ブランシュが初めての嫁入りする聖女となる。
これから自分がどういう名で呼ばれるのかわからないけれど、胸の内にあるのはわくわくした気持ちだった。