働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
* * *

 戸惑っているのは、ブランシュも同じである。

(ど、どうしてこんなに歓迎されるの?)

 田舎とは一転、街の領民たちは馬車を見るなり歓迎の意を示した。しかも、ブランシュが聖女であることを知っているようだ。

「る、ルネ。どうしよう」
《笑ってやればいいじゃないか。思惑はどうあれ、君のことを歓迎しているのは間違いないんだ》
「でも、私、こんなに期待されるとプレッシャーだわ」
《期待なんて、勝手にする奴が悪いんだから、失望されても気にしなきゃいい》
「ルネ……メンタルが強すぎるよ」
《君が弱すぎるんじゃない? それに君にはリシュアンの声を聞けるっていう特技があるんだ。それを使ってうまくやればいいじゃないか》

 そう言われれば、少し気持ちが軽くなった。いつもリシュアンの言葉は、ブランシュの行く先を照らしてくれる。彼を信じていればきっと大丈夫だ。

「それも、そうね」

 ブランシュが気を取り直したところで、ガタンと馬車が停まる。そしてしばらく待つと、馬車の扉が開けられた。

「ブランシュ殿。ついたぞ。ここが屋敷だ」

 オレールにエスコートされて、ブランシュは馬車から降りたつ。
 街の中だというのに、草木の香りが強い。植えられている植物が持つ強い生命の力を感じた。

「すごい……」
「なにがだ?」
「生命の力を感じます」

 オレールは不思議そうな顔をしたが、ブランシュは確かに感じていた。
 ここは自然が多く、生命のパワーが宿っている。

(この感覚、いつかも感じたことがある。……あそこに似ているのよ。前世、私が暮らしていた街)

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