働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~

改めて説明いたしましょう


 ブランシュは、猫を抱きかかえたまま早足で自室へと向かう。思わず預かる宣言もしてしまい、頭を抱えたくなる。

《わあ、すごい速さだなぁ》

 腕の中の猫は、のんきにつぶやいている。

(……かわいい)

 ジンジャーは撫でさせてはくれたけれど、抱き上げさせてはくれなかった。なにげに前世での夢がかなってしまった……のに、ブランシュの心は複雑だ。

(外見のかわいらしさと、話し方のギャップについていけないわ。なんか嫌)

 ブランシュは悲しくなってくる。
 無言のまま部屋まで来て、猫をベッドの上に乗せる。あまりに急いだため、息が上がってしまって、声も出せない。

《ちょっとは落ち着きなよ》
「はあ、はあ。……無理よ。訳が分からないもの。前世を思い出したことだって驚きなのに、しゃべる猫が現れてみなさいよ。正気でいられるわけがないじゃないの」
《しゃべってるわけじゃないじゃん。頭の中に直接話しかけているんだよ》
「もっと訳が分からないわ!」

 そろそろキャパオーバーである。誰かこれはすべて夢だと言ってくれないだろうか。

《それにさ、僕は猫じゃなくて賢者ルネだってば》
「嘘おっしゃい。賢者ルネって言えば、建国の英雄よ。千年も前の人物が生きているわけがないわ」

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