働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~

 新しい朝が来る。今日はもうひとりの侍女ベレニスが一緒だ。

「マリーズは昨日ご挨拶したのよね。どんな方?」
「うーん。なんかちょっと、要注意な感じ?」
「要注意って?」
「なんていうか、外面は良さそうなんだけどね」

 話しているうちに、ブランシュの部屋の前についてしまった。
 ただ今の時刻は、朝の六時半。騎士時代の名残で、オレールは一時間前から起きて、鍛錬を行っている。

「起きておられるかしら」
「寝ているかもね」

 マリーズは、ぐうたらな聖女はまだ寝ているに違いないと思っていた。しかし、朝食の時間が七時半なので、そろそろ目覚めてもらい、身支度をしてもらわねばならない。

「失礼します、ブランシュ様」
「おはよう。マリーズ。あら、もうひとりいるのね?」

 マリーズの予想に反して、ブランシュはすでに着替えを終えていた。

「ベレニス・ラクロアと申します。ブランシュ様。よろしくお願いいたします」
「よろしくベレニス」
「ブランシュ様、……す、すみません。着替えの手伝いもできず」

 マリーズはあっけにとられた。服も髪も完璧に整えられている。それどころか、猫を膝にのせてブラッシングまでしているのだ。

「いいのよ。神殿では自分で着替えていたのだから。それより、水晶の間に案内してもらえるかしら。朝の清掃をさせてほしいの」
「え? 清掃?」
「ええ。リシュアン様にご挨拶をしなければ」

 マリーズとベレニスは顔を見合わせた。
 朝だから動きも緩慢かと思えばそんなことは全くなく、ブランシュはてきぱきと動いた。
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