働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
ベレニスに片づけを任せ、ルネと共に本館への道を行く。すると、前の方からレジスがやって来た。
「奥様、侍女たちはどうしました?」
「マリーズは先に行ってルネのご飯の準備をしてくれているの。ベレニスは掃除道具を片付けてくれているわ」
「そうでしたか。では私が食堂までご案内いたします」
そう言えば食堂の場所を聞いていなかった。感謝してレジスと並んで廊下を歩く。
「朝から神殿の掃除なんて、さすがは聖女様ですね」
「神殿では、聖女が当番制で行っていたんです。清掃はリシュアン様もお喜びになりますから」
「そうなんですか。声が聞こえるって本当ですか?」
レジスは好奇心旺盛なようだ。楽しそうに聞かれるので、こちらもついなんでも答えそうになってしまう。
「聞こえますよ。穏やかなお声で、聞いていると幸せな気持ちになるんです」
「そうなんですかぁ」
レジスと楽しく会話しているうちに、食堂へ到着する。
すでに席についていたオレールは、なぜか驚愕したような顔で、ブランシュを見ていた。
「お待たせいたしました。オレール様」
「い、いや。待ってなどいない」
「ルネ様はこちらに」
マリーズが、ルネのご飯を持ってくる。ルネは「にゃーん」と言ってついていってしまった。
「ではお祈りを」
流れるように聖句を告げ、お祈りをすると、周囲があっけにとられたようにブランシュを見ている。
「あれ、……なにか?」
「いや。すごいな。流ちょうな聖句で」
「……すごい」
マリーズも驚きで敬語を忘れている。
しかし、ブランシュとしては感心されるのも居心地が悪い。神殿では、これがあたり前だったのだから。
「もしかして、私、おかしい、ですか?」
「いいや。私こそ、騎士団では早く食べることばかり求められていて、ゆっくり祈ることなど忘れていた」
少しだけ、困ったような顔で、オレールはそう続ける。
責められたわけではないが、ブランシュは少しだけ自分を恥じた。新しい場所で、新しいルールを知ることもなく、自分の行動を優先したことを。
(……ちゃんとみんなの行動を見てから動くべきね)
「申し訳ありません。こちらのルールに合わせますわ。私がおかしなことをしたらご指摘ください」
「いや。食事の前には祈りをささげるのは当然のことだ。忘れていた俺たちが不敬だった。今後は必ず祈りをささげよう」
(……やっぱりオレール様って)
いい人だ、とブランシュは思う。自分の非を素直に認めることができ、他人を尊重することを厭わない。
(いい人が、報われる世の中であってほしいわ)
だからこそ、彼が苦悩しているのが、ブランシュにはなんだかくやしいのだ。
「奥様、侍女たちはどうしました?」
「マリーズは先に行ってルネのご飯の準備をしてくれているの。ベレニスは掃除道具を片付けてくれているわ」
「そうでしたか。では私が食堂までご案内いたします」
そう言えば食堂の場所を聞いていなかった。感謝してレジスと並んで廊下を歩く。
「朝から神殿の掃除なんて、さすがは聖女様ですね」
「神殿では、聖女が当番制で行っていたんです。清掃はリシュアン様もお喜びになりますから」
「そうなんですか。声が聞こえるって本当ですか?」
レジスは好奇心旺盛なようだ。楽しそうに聞かれるので、こちらもついなんでも答えそうになってしまう。
「聞こえますよ。穏やかなお声で、聞いていると幸せな気持ちになるんです」
「そうなんですかぁ」
レジスと楽しく会話しているうちに、食堂へ到着する。
すでに席についていたオレールは、なぜか驚愕したような顔で、ブランシュを見ていた。
「お待たせいたしました。オレール様」
「い、いや。待ってなどいない」
「ルネ様はこちらに」
マリーズが、ルネのご飯を持ってくる。ルネは「にゃーん」と言ってついていってしまった。
「ではお祈りを」
流れるように聖句を告げ、お祈りをすると、周囲があっけにとられたようにブランシュを見ている。
「あれ、……なにか?」
「いや。すごいな。流ちょうな聖句で」
「……すごい」
マリーズも驚きで敬語を忘れている。
しかし、ブランシュとしては感心されるのも居心地が悪い。神殿では、これがあたり前だったのだから。
「もしかして、私、おかしい、ですか?」
「いいや。私こそ、騎士団では早く食べることばかり求められていて、ゆっくり祈ることなど忘れていた」
少しだけ、困ったような顔で、オレールはそう続ける。
責められたわけではないが、ブランシュは少しだけ自分を恥じた。新しい場所で、新しいルールを知ることもなく、自分の行動を優先したことを。
(……ちゃんとみんなの行動を見てから動くべきね)
「申し訳ありません。こちらのルールに合わせますわ。私がおかしなことをしたらご指摘ください」
「いや。食事の前には祈りをささげるのは当然のことだ。忘れていた俺たちが不敬だった。今後は必ず祈りをささげよう」
(……やっぱりオレール様って)
いい人だ、とブランシュは思う。自分の非を素直に認めることができ、他人を尊重することを厭わない。
(いい人が、報われる世の中であってほしいわ)
だからこそ、彼が苦悩しているのが、ブランシュにはなんだかくやしいのだ。