働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
ブランシュは水晶の間に入り、リシュアンに祈った。
(リシュアン様、お願い、光を)
ブランシュが願うと同時に、水晶が輝きを増した。
それを見ていた領民は、驚きのあまり動きが止まる。
「皆さんが来てくださったおかげで、リシュアン様もお喜びのようです」
水晶の間からブランシュが出てくると、人々は魅了されたように黙りこくった。
「聖女様、綺麗」
やがて小さな少女がそう言うと、ぽつりぽつりと声を上げ始める。
「聖女様は、ダヤン領を救いに来てくださったのですよね」
「神は我々を見捨ててはいなかったということでしょう?」
期待に満ちた眼差し、ついこの間までは、こんな視線が重たくて仕方ないと思っていた。
だけどリシュアンと話ができるようになって、リシュアンが実は神ではなく魔獣だと知って、なにかが吹っ切れたような気がする。
「いいえ」
ブランシュは静かに、だがはっきりと言った。
「私は、オレール様の妻になるためにここに来ました。神が望まれたのはそれだけです。ですが、私はオレール様が幸せになるために、この土地がよくなればいいと思っています。それは私ひとりでなしえることではありません。どうぞ皆さま、ご協力をお願いします」
「俺たちが……?」
「聖女様がしてくれるんじゃないの?」
「しませんよ」
ブランシュは少し突き放したように言った。
「なにかを変えたいときは、まずは自分から変わらなくては。私もお手伝いいたします。みんなで、この土地をよくしていきましょう」
リシュアンが賛同するように水晶を光らせてくれたおかげで、集まった街の人々の歓声はものすごい大きさとなった。
「皆さん。オレール様はいつも皆さんのことを考えています。今はまだ、突然の領主交代に戸惑っていますが、必ずあなたたちを助けるために動いてくださいます。どうか信じてください」
「も、もちろんです」
「聖女様が言うなら、当たり前だわ」