働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
* * *
ルネは猫の姿で屋敷を探索していた。
聖女が連れてきた猫ということで、今のところ、ルネはみんなから丁重な扱いを受けている。
ルネにとって、世界の再構築は命を懸けた大事業だった。リシュアンの魔力を水晶に封じ、彼の力を使って六芒星の結界を張った。これによって魔素がこれ以上失われることはなくなったので、ルネはリシュアンと組んで世界を再構築したのだ。
しかし肉体をなくしてしまった彼にとって、この世界は現実感のないものとなってしまった。どこをどう動かせば、世界はよりよく動くのか。どうすれば国が栄えるか、悪い思想を持つやつらを、くじくことができるか。効率を求めるあまりに、彼にとっては国造りゲームのような様相さえ呈するようになった。
千年も生きれば感覚はどんどん鈍ってくる。誰が傷つこうが、誰が笑おうが、ルネにとってはあまり関係がない。
予測を立て、その通りに動く未来を、繰り返しているうちに、たいていのことには心が動かなくなってしまった。
しかし、ブランシュの頭の中を覗いた瞬間、もうとっくになくしたと思っていた高揚感が湧き上がって来た。
見たことのない世界。生きているのは人間と同じようなのに、そして魔法がないのに、便利な機械を持って暮らす人々。
わくわくした。ルネはその技術の詳細が知りたい。それをこの世界にも造ることができたら、もっと世界はよくなるかもしれない。だからこそ、ブランシュについていくことを選んだのだ。
(だってのに、こいつはのんきなもんだなぁ)
慈善事業は嫌だと言った割に、今ブランシュがしているのは完全に領主のサポートだ。
(僕は知っているぞ。お人よしって言うんだ。こういうやつのことは)
まるでリシュアンのようだ。
お人よしの魔獣は、騙されて洗脳され、戦いに身を投じさせられた。そして体を失い、まるで人柱のようにこの世界の一部となってからも、不満も言わずに神を演じている。
(人のいい奴は、注意して見ていないと危ないんだ)
自分が抱えきれないほどの悪意や善意を抱え込んだ時、人という入れ物は暴走するものだ。
リシュアンがブランシュのことを妙に気にするのは、自分と似ていて放っておけないからなのだろう。
(まあ、僕はこの世界がおもしろくなれば、それでいいんだけど。リシュアンが壊れたら困るからなぁ)
《生まれながらに聖女みたいな子っているんだねぇ》
スースーと幸せそうな寝息を立てるブランシュの隣で、ルネは独りごちた。
ルネは猫の姿で屋敷を探索していた。
聖女が連れてきた猫ということで、今のところ、ルネはみんなから丁重な扱いを受けている。
ルネにとって、世界の再構築は命を懸けた大事業だった。リシュアンの魔力を水晶に封じ、彼の力を使って六芒星の結界を張った。これによって魔素がこれ以上失われることはなくなったので、ルネはリシュアンと組んで世界を再構築したのだ。
しかし肉体をなくしてしまった彼にとって、この世界は現実感のないものとなってしまった。どこをどう動かせば、世界はよりよく動くのか。どうすれば国が栄えるか、悪い思想を持つやつらを、くじくことができるか。効率を求めるあまりに、彼にとっては国造りゲームのような様相さえ呈するようになった。
千年も生きれば感覚はどんどん鈍ってくる。誰が傷つこうが、誰が笑おうが、ルネにとってはあまり関係がない。
予測を立て、その通りに動く未来を、繰り返しているうちに、たいていのことには心が動かなくなってしまった。
しかし、ブランシュの頭の中を覗いた瞬間、もうとっくになくしたと思っていた高揚感が湧き上がって来た。
見たことのない世界。生きているのは人間と同じようなのに、そして魔法がないのに、便利な機械を持って暮らす人々。
わくわくした。ルネはその技術の詳細が知りたい。それをこの世界にも造ることができたら、もっと世界はよくなるかもしれない。だからこそ、ブランシュについていくことを選んだのだ。
(だってのに、こいつはのんきなもんだなぁ)
慈善事業は嫌だと言った割に、今ブランシュがしているのは完全に領主のサポートだ。
(僕は知っているぞ。お人よしって言うんだ。こういうやつのことは)
まるでリシュアンのようだ。
お人よしの魔獣は、騙されて洗脳され、戦いに身を投じさせられた。そして体を失い、まるで人柱のようにこの世界の一部となってからも、不満も言わずに神を演じている。
(人のいい奴は、注意して見ていないと危ないんだ)
自分が抱えきれないほどの悪意や善意を抱え込んだ時、人という入れ物は暴走するものだ。
リシュアンがブランシュのことを妙に気にするのは、自分と似ていて放っておけないからなのだろう。
(まあ、僕はこの世界がおもしろくなれば、それでいいんだけど。リシュアンが壊れたら困るからなぁ)
《生まれながらに聖女みたいな子っているんだねぇ》
スースーと幸せそうな寝息を立てるブランシュの隣で、ルネは独りごちた。