働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
 朝食を終えてから、ブランシュはマリーズに外出用の服を見立ててもらった。

「素敵ね。ありがとう」
「旦那様とお出かけなのでしょう? おしゃれしていただたかないと」

 上品なブルーのドレスに、いつもはふたつに結んでいる髪はおろし、トップの部分を編み込んでもらった。
 神殿では聖女らしさを求められたので、自分のためにおしゃれするということはなかった。こんなにも気持ちがうきうきするものだなんて、初めて知った。

「ありがとう、マリーズ」

 身支度を整え、部屋を出る。足元についてきていたルネが、『まあ、気をつけて行って来いよ』と言った。

「ルネはいかないの?」

 ルネは鼻で笑って尻尾を立てた。

《わざわざデートの邪魔をする趣味はないからな》
(デート?)

 オレールとの外出は、そのほとんどが視察だ。だから今回のお誘いも、そうなんだと思っていた。

「お待たせしました」
「待ってなどない。……よく似合っているな。ドレス」

 だから、丁寧なエスコートで、こんなに優しい眼差しを向けられると、調子がくるってしまう。

(……これってデートなのかしら。なんだか緊張してきたわ)

「今日はどこに行くんですか?」
「君に見てほしいものがあるんだ」

 オレールはブランシュを馬車に誘う。

「レジス、例の場所へ」
「はい!」

 どうやら御者はレジスが担当するらしい。
 馬車の小窓のカーテンも引かれていて、どこに行くのかがよくわからない。でもそれほど時間が経たずに馬車は止まった。おそらく街を出てはいないはずだ。
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