働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~

収穫祭の開催

 実りの秋がやって来る。ブランシュがダヤン領に来て八か月ほどが経っていた。
 この時期は天候も荒れるため、ブランシュの神託が大活躍だ。

「三日後に嵐になるそうです。少し早いかもしれませんが、果実は収穫してしまった方がいいかもしれませんね」
「はい! ありがとうございます。ブランシュ様」

 最近、ブランシュは小神殿で、主に天気の相談に乗っている。

《やれやれ、リシュアンは天気予報の機械じゃないんだよ》
「そう言わないで。農業従事者にとって天候は一番大事なんだから」
《ブランシュだって、すっかり神殿の人みたいになっているじゃん。それ、結局前と変わっていないけど、いいの?》
「……そうねぇ。案外嫌いじゃなかったのねって思うわ」

 ブランシュの暮らしは、すっかり安定していた。
 朝は神殿の清掃。そのまま午前中は神殿の雑務を神官たちと共に行う。午後からは領主の婚約者として、領地の見回りをし、領民からの相談を受け付けていた。

「ブランシュ様、オレール様がお呼びです」

 シプリアンが慌てた様子でやって来て、ブランシュはルネと顔を見合わせながら執務室へと向かった。
 中には数名の人がいるようだ。

 ブランシュが中に入ると、オレールに詰め寄っていた三人が、ほっとしたように笑顔になる。

(悪い話じゃなさそう?)

「ブランシュ様! オレール様を説得してくださいよ」
「説得? なにを?」
「村のみんなは、秋の収穫祭を復活したいって言ってるのです。なのにオレール様ときたら、無駄なお金はかけたくないと言って」
「収穫祭?」
「ええ。昔行われていた領主主導の祭りです。不作の年が続き、自然にすたれていったものなんですがね。今年はちゃんと領主様がしっかり仕事しているのですから、ぜひ復活させたいと思っているんです」

 声を荒げているのは、農園組合を取りまとめているバルビエという男だ。

「今年は収穫量も多く見込めますし、リシュアン様への感謝の気持ちを表す意味でも、やりたいんですよ!」
「そういうことですか」

 神に感謝をささげるというならば、神事のようなものだ。

「いいじゃないですか。オレール様はどうして反対なのですか?」
「別に、反対ではない……が、収穫祭はどうしても神殿がかかわってくる。君の仕事が増えるだろう」

 どうやら、ブランシュの負担が増えることを心配してくれているらしい。
 けれどせっかく皆がやる気になってくれているのだ。ブランシュも応援したい。

「お祭りはみんなでやるものですし、神に感謝をささげる行事を私が嫌がるわけがないじゃないですか」
「おお、さすがはブランシュ様ですな」

 こうして、収穫祭が行われることになったのである。
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