働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~

「本当に、リシュアン様ですか?」

《魔獣だって知ったら、信じられない?》

 傷ついたような響きだ。ブランシュは胸が痛くなってきた。

(そうか。リシュアン様は世界中の声を聞くことができるんだ)

 なのに、リシュアンが聞いているとは思わず、思い切り本音を言ってしまった。

「リシュアン様、その……」
《嫌、だよね。魔獣なんて。だましていて、本当にごめん》
「ちが……」

 ブランシュが否定する前に、ルネの尻尾が彼女の口をふさぐ。

《気にするなよ。神でも魔獣でも変わんないって。リシュアンは、生き残った人間たちのために、ずっと力を尽くしてきたんだ。その行為は、神のやることとなにも変わらない》

 ブランシュは口をふさがれたまま、首を縦に振った。内心は、自己嫌悪でいっぱいだ。

 ルネの言うとおりだ。彼の神託によって救われた人を、ブランシュは何人も見ている。だからこそ、神託を伝えられる自分が誇らしいと思っていたのだ。

「本当にそうです。……魔獣だから嫌だなんて、失礼だわ。……ごめんなさい」

 自分の発言を取り消したい。今度は恥ずかしさで泣きたくなってきた。

(私の馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿!)

《馬鹿じゃないよ。ブランシュはいい子だ。いつも、水晶を綺麗にしてくれてうれしい》

 朝の清掃活動のことだろうか。磨けば綺麗な光を放っていた。あれは喜んでくれていたのか。

《あんまり余計なことはしゃべるなよ。威厳が無いと神っぽさがなくなるからさ。ブランシュはもう正体を知っているからいいけど》

 ルネがリシュアンに向かって苦言を呈する。
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