働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
* * *

 オレールがダミアンを呼び出したところ、逆に小神殿で話をしたいと指定された。

「兄上は相変わらずだな」

 執務室で、オレールは深いため息をつく。
 その意志の強さが頼もしく見えていたこともあったが、今は振り回されている感覚しかない。

「レジス、ブランシュはどうしている?」
「小神殿で祈りをささげておられますよ」
「そうか。では兄上より先に行かないとな。ブランシュになにを言うかわかったものじゃない」
「そうですね。今日はこの書類にさえ目を通していただければ、時間が取れますので、お願いします」
「ありがとう。レジスはいつも優先順位をつけてくれるから助かる」
「それを理解していただける上司でありがたいですよ」

 二時間ほどで仕事にけりをつけ、オレールが小神殿に向かうと、なぜか人だかりができていた。

「なんだ? これは」
「変ですね。失礼ですが皆さん礼拝ですか? 終えたら出ていただかないと、満員過ぎて入り切れませんが」

 レジスが慌てて人だかりを整理しようとすると、その中のひとりが大きな声で叫んだ。

「なんでも、今日ここで大発表があるって聞いたが」
「ダミアン様が帰って来たそうですね」
「兄上がなにか言っていたのか?」

 オレールは嫌な予感がして、人をかき分けて奥へと行く。

「あっ、オレール様」
「みゃ」

 人波の中央に、ブランシュとルネがいた。

「ブランシュ、大丈夫か」
「今日は皆さんたくさんお集まりで。……なにかあるんですか?」
「それが……」

 説明しようというところで、東側の扉が音を立てて開いた。
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