犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
本編
「帰ったぞ」
「おかえりなさいませ。坊っちゃま」


受け取ったブレザーから臭う、昨日のものとは違う女物の香水の匂いに眉をひそめた。

毎日毎日それを落として清潔にする私の身にもなって頂きたい。

ただでさえ私は鼻が敏感だと言うのに。

そんな私の態度がお気に召さなかったのか坊っちゃまは眉間に皺を寄せた。


「おいその呼び方やめろって何度も言ってるだろ」


違った。お気に召さなかったのは呼び方の方だった。

でもこの呼び方は私以外もしている。

それにもかかわらず何故私だけが咎められなければならないのだろう。


「じゃあ私を専属メイドにするのを辞めたら如何です?」
「そんなことするわけないだろう」
「何故ですか」


ずいっと詰め寄ると坊っちゃまは勢いよく顔を背けた。

そんなに私の顔が見るに堪えないのかしら。

以前参加した社交界ではそれなりにチヤホヤされていたというのに。


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