犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
だがそれがメイドとして働く上で活かせるとは思っていない。

言い方に問題があったが、郁人坊っちゃまの言ったことは間違っていないのだ。


「思わない。大体俺はお前を一介のメイドとして終わらせるつもりはない」

「と、言いますと?」


なぜそんなにも強く言い切れるのだろう。

遥くんが私の目の前に立った。

なぜそんなにも綺麗な目をしているのだろう。

遥くんが得意げな笑みを浮かべた。


「俺は将来独立して新しい企業を立ち上げる予定だ。そのときに賢いお前が隣にいた方が得策だろ」


初耳だった。

当然遥くんは雅楽代家の幹部として君臨するものだとばかり思っていた。

それに今、遥くんは私を賢いと言った。認めてくれていたのが、目頭が熱くなるくらいに嬉しい。


「私を、雇ってくださるのですか?」
「いや、正確には俺と経営側に回って欲しい。さっきみたいにフォローしてくれると助かる。あぁ、あとついでにお前の家族も引き入れてもいい」


さっきからスラスラと話を進めてくる。

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