犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
今の菱川で経営の才能があるのは間違いなく凜だというのに、誰もそれに気づいていない。

宝の持ち腐れとはよく言ったものだ。

勿体ない。

もっと上手くやればいいのに。


(凜ってほんとバカ真面目だよな)


見る度にそう思う。

これほどまでに人を強く意識するのは、後にも先にも凜だけだ。

そんな確信が俺の中にはあった。






俺が中学校に入学したての頃だった。

いつも堂々と社交界に凜の様子がおかしかった。

表面上はいつもと何ら変わらないが、時々視線が下に向いている。

そのタイミングを狙って下から覗き込んだ。


「おい凜どーした。いつになく辛気臭い顔してるぞ」
「そういうことは思っても言わないものよ。大体話しかけて最初に言うことがそれ?センスないわね。もう1回マナーを学び直したらどう?」


凜の小言が始まった。

せっかく心配してやったのに、凜はそれを素直に受け取ってくれない。

そういう性格も問題だと言ってやりたいが、倍になって返ってくることが目に見えているので黙り込んだ。

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