犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
それにしても顔がいつもより暗い。

化粧で隠してはいるが薄らクマだって見える。

本当は聞きたいが余計なお世話だと言われるだろう。

凜は決して俺を頼らない。

いや、俺だけじゃなくて誰も、か。

もどかしい。

凜は今日も1人で立っている。





「・・・・・・は?」


その夜父親の書斎に呼び出された。

そこで告げられたことがあまりに信じられなくて、瞬きすら忘れてしまった。


「おい父親に対し『は?』はないだろ。マナー講師でも雇ってやろうか?」


さっき凜にも似たようなことを言われた。

そんなに俺の態度には問題があるのか。

いや、今はそれはどうでもいいんだが、別の方向に思考をもっていきたいぐらい脳みそが受け入れを拒否していた。

凜の家の会社が傾き始めている。

今は些細なものでも、この状況を打破することが出来なければ5年も経たずに倒産してしまうという。

正直これから菱川が持ち直すとは考えにくい。

だって凜の父親には経営の才能がないからだ。

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